今岡、感激V手記…まだ身体がしびれています
まだ身体全体がジーンとしびれています。優勝の瞬間は頭が真っ白で、宴が終わると徐々にプロ生活6年の喜びや苦しみが頭の中をよぎり、目頭が自然と熱くなって…。野球への「志」の高さを注入してくださった星野監督、常に励ましていただいたムッシュ(吉田義男元監督)、そして女房(梨恵夫人)の支えがなければ今の僕はなかったと断言できます。そしてファンの方々へ感謝の気持ちをこめて筆をとりました。

星野監督が、死んでいたチームとナインを甦らせてくれました。2年前、監督就任の第1回のミーティングで「みんなで力をあわせて優勝するんだ」と明確な目標を提示してもらえた。そのために各自が何をなすべきか、いろいろなアドバイスをいただきました。

それまでは各々がゲームで活躍さえすれば満足していたけど、それが弱小チームにありがちな自己満足に過ぎなかったと気づいた。ヒットを4本打っても、勝たないと意味がない。優勝へ、という高い志で個々が精進すれば、目先のヒットで喜んでいられない。

ことしの快進撃は、そんな土壌のうえで開花したもの。個々の選手が気迫にあふれたプレーをすると、他の選手も気が抜けない。そこから連帯感が生まれる。仲良しクラブではなく戦場での同志といった感覚でグラウンドにいます。今年の仲間は最高の同志でした。

ルーキー時代から公私にわたりアドバイスをいただいた恩人が吉田さんです。初のキャンプで二塁手が適性だと見抜いてもらい、その二塁手で優勝できたのは最大の恩返しだと思っています。

プロ4年目でレギュラーを外されたときも「実力があるのだから自分の思う通りにやれ」と直接、あるいは新聞紙上で励ましていただいた。当時(野村前監督時代)、したり顔で「自分の力を信じている? そんなことを言っているからダメなんだ」といわれることが多かったけど、吉田さんはあくまで僕の力を信じてくださった。あれがなかったら、もっと落ち込んでいたでしょう。

「貴方の力はこんなもんじゃない」と励まし続けてくれた女房にも感謝したい。彼女は僕より早く「優勝」しているんです。結婚してからネールアートを始め、立派なプロとしてコンテストでも優勝し、その世界ではちょっとした有名人。オフに夫婦そろってTV出演の依頼があるときも、直接、彼女への交渉なので、僕より名前が知られているのかも…。

あとは日本一になって監督を再度胴上げしたい。首位打者のタイトルも狙う。5月7日に中日・野口からバックスリーン右へアーチを放ったのが最高のバッティング。イメージ通りのスイングと打球の軌道だった。シーズンの半分以上トップにいるのだから、今さら抜かれるのは悔しい。

来季も今季のようにコンスタントな成績を残し、いずれ5番打者としてランナーを返す仕事がしたい。

志さえ高くもっていれば、どれもクリアできると思うし、今後も自分に自信をもって野球に打ち込んでいきます。

この6年間の思いのたけをつづったつもりです。優勝を果たした喜びより、苦しかったことが走馬灯のように浮かびます。その苦闘の時代を支えてくださった方々に少しでも恩返しができた安堵感でいっぱいです。
ZAKZAK(夕刊フジ) 2003/09/16